マタニティピラティス完全ガイド|安定期からの安全な始め方と出産準備まで解説
2023年1月24日公開(2025年11月26日更新)

新しい命を迎える妊娠は、喜びと同時に心身の変化が一気に訪れる時期です。妊娠期間は腰痛、肩こり、むくみ、呼吸の浅さ、睡眠の質低下、精神的不安定など、さまざまな不調に悩まされる方が少なくありません。「できるだけ安全に運動して体力をつけたい」「出産に向けて備えたい」「心身が落ち着く時間がほしい」──そんなニーズを満たすエクササイズとして近年注目されているのが マタニティピラティス です。妊婦さん特有の身体変化と安全性に配慮しながら、呼吸・体幹・骨盤底筋・姿勢を整えるプログラムは、妊娠中の不調改善だけでなく出産準備としても役立つと言われています。今回はマタニティピラティスの概要、安全に取り組むためのポイント、妊娠期に期待できる効果、無理なく続けるためのコツをまとめ、初めての方でも安心して一歩踏み出せる情報をお届けします。
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マタニティピラティスとは?安全性と開始時期・NG動作を理解して行うことが最優先
妊娠中のエクササイズは何よりも安全性の確保が最優先です。ここでは、マタニティピラティスが妊娠期に向いている理由、始めるタイミングの目安、避けたい動作と注意点について整理し、安心して取り組むための土台を作ります。
マタニティピラティスが妊娠期に向いている理由とは

まずはマタニティピラティスが妊婦さんの身体に合う理由を理解することから始めましょう。妊娠期は筋肉・靭帯・姿勢が大きく変化するため、身体を安全に支える力が必要になります。マタニティピラティスは、一般的なピラティスを妊娠期の身体に合わせてアレンジしたプログラムで、呼吸・姿勢・体幹の安定・骨盤底筋の機能を重視しながら、妊娠中でも無理なく行える動作で構成されています。妊娠期にはリラキシンという女性ホルモンの影響で靭帯が柔らかくなり、関節が不安定になりやすく、腰痛や股関節痛が発生しやすい傾向にあります。一般的なピラティスでもマタニティピラティスでも体幹の深層部にあるインナーマッスルの強化を重視しますが、これはインナーマッスルを強化して正しく働かせることで姿勢が保たれるためです。
いつから始められる?妊娠中のエクササイズ開始時期の目安と注意点

妊娠中のエクササイズは「いつから始められるのか」という疑問がつきものです。まずは安全に取り入れるための目安と医師の判断について理解しておきましょう。マタニティピラティスは妊娠中の身体のことを考えられたエクササイズですが、それでも始める際は自己判断をせず、必ず主治医・助産師の許可を得ることが大前提です。妊娠経過は個人差が大きく、切迫早産、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、出血などがある場合はエクササイズを控える必要があります。一般的な開始目安は体調が安定してくる妊娠中期(16週以降)ですが、医師の判断が最優先です。また運動開始後に膣出血/激しい腹痛/眩暈/頭痛/胸痛/息切れ/ふくらはぎの腫れ/羊水漏れ/胎動の減少などの症状が出た場合は、すぐに中止し医療機関に相談してください。
☆英語圏ではマタニティピラティス(Maternity Pilates)とは言わない?
「マタニティ」(maternity) とは「母であること、母らしさ、母性、産科、マタニティドレス、妊婦服」といった意味ですが、実は英語圏でマタニティピラティスは「Prenatal (出産前の)Pilates」と表現するのが一般的です。
妊娠期に避けたいNG動作と安全に取り組むためのポイント

エクササイズを安全に続けるためには「避けるべき動き」を事前に知ることが重要です。妊娠期の身体にとって無理のない運動範囲を見極めましょう。
<妊娠期に避けたい代表的なNG動作>
・急激に腹圧が高まる動作(強い腹筋運動など)
・長時間の仰向け姿勢
・ジャンプや反動を使う動き
・片足でバランスを取る不安定な姿勢(転倒リスク)
・高温多湿環境での運動(ホットピラティス等)
マタニティピラティスはこうした禁忌動作を避けながら進められるため安全性が高いと言えます。ただし、マタニティピラティスは独学ではリスクが高くおすすめできません。有資格でマタニティ指導に対応できるインストラクターのもとで身体をチェックしてもらいながら進めると、妊娠期でも安心して取り組むことができます。
<参考>
産婦人科診療ガイドライン-産科編2020(公益社団法人日本産科婦人科学会、公益社団法人日本産婦人科医会)
妊婦スポーツの安全管理基準(日本臨床スポーツ医学会)
マタニティピラティスが妊娠期にもたらすメリット ─ 身体・出産準備・精神面を多角的にサポート
マタニティピラティスは体力づくりだけでなく、妊娠期特有の不調・出産準備・精神面まで多角的にサポートできる点が魅力です。ここでは妊婦さんに期待できる身体面・精神面のメリットをわかりやすく解説します。
呼吸と姿勢の改善で妊娠中の不調をやわらげる

マタニティピラティスは妊婦さんの多くに見られる呼吸の浅さ・姿勢の崩れに同時にアプローチできる点が大きな魅力です。妊娠が進むにつれて子宮が大きくなると横隔膜が押し上げられ、胸腔が狭くなるため息苦しさを感じやすくなります。ピラティスで行う胸式呼吸は肋骨を三次元的に広げる練習を行います。そのため横隔膜と腹横筋の協調を促し、息を吸い込んだ際に空気が胸部全体へ入りやすくなり、背中側にも呼吸の広がりを感じられるようになります。こうした呼吸法が身についてくると日常生活でも自然と深い呼吸が入りやすくなる傾向があります。
また姿勢に関しても、妊娠期は重心が大きく前方に移動しやすいため反り腰(腰椎前弯)や猫背(胸椎後弯)といった不良姿勢を生じやすく、それが腰痛・肩こり・背部痛・頭痛の原因になる場合があります。ピラティスでは体幹と脊柱を支えるインナーマッスルが協調して働き、骨盤と背骨の配列を整えやすくなるため、負担の偏りが減り、身体のしんどさが軽減される例が多く見られます。呼吸と姿勢の調整は、妊娠期間を快適に過ごすための中心となる要素であり、マタニティピラティスはこの両方に同時に働きかけられる点が大きな価値と言えます。
骨盤底筋と体力維持で出産準備&産後の回復にもつなげる

出産に向けた身体づくりは「筋肉を鍛える」というよりも「必要な筋肉が適切なタイミングで働ける状態を整える」ことが鍵になります。マタニティピラティスはこの観点から出産準備をサポートできるエクササイズです。特にピラティスは子宮や膀胱・直腸などの臓器を下から支える重要な筋肉群である骨盤底筋の強化に優れています。妊娠すると骨盤底筋は胎児と羊水の重みによって伸ばされた状態になりやすく、適切に働きにくくなる傾向があります。そこで胸式呼吸や横隔膜の動きを組み合わせることで、骨盤底筋が「収縮と弛緩」の両方を自然にできる状態を目指します。この“柔軟性と機能性の両立”は分娩に向けて大きな利点になります。さらに産後の尿漏れや頻尿、骨盤の不安定さ、腰まわりの違和感などに対しても、骨盤底筋をケアしていくことは大切だと考えられています。
また妊娠後期は運動不足や体重増加で体力が落ちやすく、出産という大きな身体的イベントに向けて筋持久力が必要となります。マタニティピラティスは低衝撃・低負荷の運動でありながら、ゆっくりとした動きの継続でインナーマッスルや股関節周囲の筋群を働かせ、呼吸に合わせて動き続けることで無理のない全身運動になります。これにより、「出産を乗り切るための体力づくり」と「妊娠中の身体の負担軽減」の両方をねらえる点が大きなメリットです。
ストレス軽減・睡眠改善・精神面の安定へのサポート効果

妊娠期はホルモンバランスの変化や身体の重さ・不安感などから気持ちが揺れやすく、睡眠の質に影響することもあります。マタニティピラティスは身体のケアだけでなく、そんな精神的な安定にも寄与しやすいエクササイズです。胸式呼吸や背骨を滑らかに動かすと自律神経の中でもリラックスに関わる副交感神経を優位にしやすく、レッスン後に「気持ちが落ち着く」「よく眠れた」という変化を感じる妊婦さんが多い傾向があります。これは、身体感覚に丁寧に注意を向けることで、思考を過剰に巡らせすぎない“マインドフルネス的効果”が働くことも背景にあります。
加えて、レッスンの時間が「自分のためだけの時間」になることで、妊娠期に起こりやすい“自分自身のケアが後回しになってしまう状態”から距離を置きやすくなります。心身の回復・セルフコンパッション(自分への思いやり)の視点から見ても、マタニティピラティスは妊娠期間の生活を整える大きな助けとなると言えます。
安全に実践するためのポイントと継続のコツ ─ 環境・服装・水分補給・指導者選び・自宅でできる動き
マタニティピラティスを効果的かつ安全に続けるためには、指導者選び・環境づくり・服装・水分補給・セルフエクササイズの工夫が鍵になります。この章では、継続のコツと実践のポイントをまとめます。
有資格インストラクターのもとで行うメリットとスタジオ選びのポイント

安定期に入っても妊娠中は身体の変化が大きいため、個別に調整してもらえる環境が安全につながります。最も大事なことは妊娠期の身体のことをしっかりと理解し、マタニティピラティスの指導を行えるインストラクターの指導の下で行うことです。マタニティ指導に対応できる有資格インストラクターであれば妊娠週数・体調・既往歴によって異なる動きに合わせたメニューを組むことができます。できればプライベートレッスンを受講し、インストラクターにお腹の大きさ、痛みや体調に合わせて調整してもらいましょう。またスタジオの立地についても無理のない範囲で通いやすい場所を選ぶことが安心につながります。
妊娠期でも快適に運動できる服装・環境・水分補給の工夫

妊娠中は体温調整が難しく、発汗量も増えるため運動環境を整えることが重要です。エクササイズの際は快適さを優先し、負担を減らす工夫を取り入れましょう。締め付けのないウェア、羽織で調整しやすい服装、適度な室温・湿度、水分・ミネラル補給などを意識することで安全に運動できます。なお、高温多湿の環境・ホットピラティスは脱水リスクや転倒の可能性から避けるようにしましょう。
自宅でできるおすすめの動きと無理なく続けるためのコツ

体調に波がある妊娠期は「できる日にできる範囲で行う」ことが長続きのポイントです。スタジオとセルフケアを柔軟に使い分けましょう。
<妊娠期でも行いやすい代表的な動き>
・胸式呼吸と骨盤底筋の連動
・キャットストレッチ(四つ這い背骨ムーブメント)
・横向き(側臥位)での脚上げエクササイズ
いずれも必ずインストラクターに確認し、かつ「痛みが出ない」「呼吸が止まらない」「お腹を圧迫しない」「無理を感じない」を基準に行いましょう。不快感があれば即中止し、体調を最優先してください。
まとめ
マタニティピラティスは、妊娠期の身体変化に合わせて安全に行えるよう設計されたエクササイズで、呼吸・姿勢・骨盤底筋・体力維持・精神的安定まで多角的にサポートしてくれる存在です。医師・助産師の許可を得たうえで、禁忌動作を避けながら取り組むことで、妊娠中の不調の緩和やセルフケア、そして産後のスムーズな回復まで見据えた身体づくりが期待できます。服装・水分補給・環境に気を配り、無理のないペースで向き合いながら、妊娠期の身体と心を整える時間を大切にしてみてください。
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